腎移植後の専門的管理を行います
腎移植は、かつて珍しい治療方法でしたが、現在は成績がよくなり腎不全治療の大切な1つになっております。腎移植術後は免疫抑制剤を適正にコントロールする必要があり専門医による診療が必要不可欠になります。また腎移植後10年透析を必要としない確率(生着率)は80%を超えるようになり術後は長期間にわたる管理が必要です。免疫抑制剤の管理のみならず、血圧や脂質異常・高尿酸血症などの管理も重要です。当院では、腎移植認定医による腎移植後の専門的管理を行うことが可能です。出身大学の聖マリアンナ医科大学や近隣病院・クリニックとの連携も行っております。
腎移植と血圧
腎移植後の血圧は1年までは自然に改善すると言われております。血圧が高いと移植腎の生着率が悪くなり、血圧のコントロールを行うことは生着率の改善につながることがわかっております。さらに移植後の血圧管理は心筋梗塞などの血管疾患による死亡も減らすことが知られています。血圧が高くなる原因として年齢や肥満以外にも移植腎動脈の狭窄なども知られており、治療抵抗性の場合には精密検査を行います。
腎移植と脂質異常
腎移植後は30-40%の患者さんが脂質異常と診断されます。ステロイドの使用やmTOR阻害薬などの免疫抑制剤の使用などにより頻度が上がると考えられております。脂質異常症があると心臓疾患などによる死亡率が上がることが知られており治療が必要です。カルシニューリン阻害剤などとの相互作用があるために治療薬であるピタバスタチンやロスバスタチンは禁忌です。
腎移植と高尿酸血症
腎移植後は40~50%の患者さんが高尿酸血症と診断されます。腎機能障害や利尿剤の使用、シクロスポリンの使用や代謝拮抗薬のミゾリビンの使用もリスクになります。尿酸値が8mg/dlを超えると移植腎の生着率を悪化させ、心血管イベントによる死亡リスクが高くなることも知られており治療が必要です。治療薬のアロプリノールは免疫抑制剤のイムランとの併用は禁忌です。
移植後悪性腫瘍
腎移植後は免疫抑制剤の服用による免疫が弱くなるために長期間になると発癌のリスクが高くなります。そのために定期的ながん検診が必須になってきます。日本人の癌の発生率は諸外国と比較すると少ないと考えられておりますが2.6%程度との報告があります。移植後早期でも若年でもリスクがあると考えられております、特にだめになった自分の腎臓に癌ができていないかの確認は重要です。